コロンくんと四畳半村

コロンくんは、子どもの心を持ったまま大人になりましたが、普段は子どもの心を隠していました。なぜならコロンくんは、多くの大人と同じように会社につとめていて、つとめている会社では子どもの心が残っていると、上司に怒られてしまうからです。コロンくんは、人に怒られることが苦手でした。「この人は本当は良い人なのに、怒らせてしまってごめんなさい」そんなことを思うのでした。怒られることより、怒らせていることが辛かったのです。

コロンくんの仕事は忙しく、朝から夜遅くまで会社にいなければなりませんでした。大変なことも多くありましたが、コロンくんはいつも笑顔でした。支えてくれる恋人がいたからです。コロンくんは週に一度、恋人に会うだけで疲れがすっかりなくなり、また次の一週間もがんばろうと思えたのです。

ところが、コロンくんの仕事が忙しくなりすぎて、恋人と会う機会が少なくなると、恋人から別れをつげられてしまいました。コロンくんは泣きました。悲しくて、仕事に行きたくないほどでした。コロンくんは、子どもの心を持っていますが、大人です。大人だから、無理をして次の日も会社に行きました。泣きすぎて目をぱんぱんにはらしながら、会社に行きました。

会社で仕事をしていても、誰もコロンくんの目がぱんぱんにはれていることに気づきませんでした。誰も自分の仕事をこなすことに精一杯だったからです。コロンくんは、「忙しいから当然だよね」と思いながらも、会社というものが初めて「いやだな」と思いました。でも、そんなことを思ってしまう自分が、一番いやだったようです。

「このままでは、自分がいやになりそうだから」という理由で、コロンくんは会社をやめました。会社をやめて何日かは、行きたかったお店に行ったり、買いたかったものを買ったり、見たかったものを見たりしましたが、ちっとも気分は晴れませんでした。それどころか、どんどん悲しい気持ちがふくらんで、コロンくん一人では抱えきれなくなり、両親の家に帰ることにしました。

コロンくんが家に帰ると、両親は温かく迎えてくれました。お母さんが作ってくれた晩ご飯を食べ、お風呂に入ると、コロンくんは肩の力が抜けたことに気がつきました。「僕、ずっと無理をしていたのかな」体がぽかぽかして、気持ちがゆるんだのか、コロンくんの目から涙がこぼれてきました。誰にも見られていないので、声をあげながらわんわん泣きました。その涙の量ときたら、お風呂のお湯が少ししょっぱくなるくらいでした。

数年ぶりに自分の部屋に入ると、懐かしいにおいがしました。コロンくんは、子どもの頃から家を出るまで、ずっと四畳半の部屋で過ごしていました。コロンくんの足がはみでてしまう小さなベッド、腰の高さまでしかない背の低い本棚、大切なおもちゃの入った木箱。それで全部でした。しかし、コロンくんは何か大事なことを忘れているような気がしました。

木箱を開けると、たくさんのおもちゃの上に、指先ほどの小さな青々とした葉っぱが乗っていました。コロンくんは、その葉っぱにどこか見覚えがありました。

「これ、なんの葉っぱだったかな?」

コロンくんが葉っぱを指先でつまみ、くるくる回していると、葉っぱは竹とんぼのように天井まで高く飛び上がり、やがてひらひらと舞い落ちました。まるで葉っぱに魔法がかかっているようでした。

「そうだ、こびとたち!」

コロンくんは、子どもの頃に遊んでいたこびとたちと、四畳半村のことを思い出しました。

「どうして今まで忘れていたんだろう。あの頃、毎日のようにこびとたちと遊んでいたのに」

今夜は時間がたっぷりあります。明日もあさっても、仕事はありません。コロンくんはため息をつき、ゆっくりと子どもの頃を思い出しました。

ある晩、子どもだった頃のコロンくんがベッドでうとうとしていると、寝返りをうったはずみでベッドから落ちてしまいました。コロンくんはとても寝相が悪かったのです。そのとき、落ちる感覚に驚いて目を開けたコロンくんは、体がゆっくりと落ちていることに気がつきました。落ちているのに、床がどんどん離れていくような、四畳半の部屋がどんどん広がっていくような感覚でした。落ちる速さはどんどんゆっくりになっていき、体がふわふわと軽くなり、コロンくんの体は静かに地面に着地しました。

「いらっしゃい、コロンくん」

コロンくんは、呼ばれたほうを振り向きました。そこには、コロンくんと同じくらいの年頃のかわいらしい女の子が、笑顔でコロンくんを見つめていました。

「こんばんは。ええと……」

「私はこびとのプラム。ここは、コロンくんのベッドの下にある、こびとの村よ。コロンくんの世界とは少しちがうから、人間の大人には見えないけど、子どもには見えることがあって、一緒に遊ぶことができるんだよ」

まわりは木で囲まれ、空も地面もありました。空には見たこともないような色の光、虹よりもっと複雑な色の光がきらめいていて、目をこらしても焦点が合いませんでした。コロンくんは、「幻想的」という言葉はこういうときに使うのだと思いました。

「あの空の向こうにはね、コロンくんのベッドがあるんだよ。コロンくんが寝返りを打つと、少し揺れるんだ」

プラムは笑って言いました。

「さあ、こっちにおいで」

プラムはコロンくんの手をにぎり、村の中心の大きな屋敷に向かって走り出しました。プラムの手はふかふかで温かく、まるで焼きたてのパンのようでした。初めて女の子と手をつないだコロンくんは、胸がどきどきしていました。

「こびとたちの集まるお屋敷よ。さあ、中に入って」

屋敷に入ると、鳴り響く歓声にコロンくんは驚きました。

「ようこそ、こびとの村へ!」

たくさんのこびとたちが、楽器を演奏し、歌い、踊り、コロンくんを歓迎しました。

コロンくんが照れくさそうにしていると、こびとたちが次々と輪の中から飛び出してきました。

「やあやあ、ようこそ、コロンくん」

「素敵な名前、よろしくね」

「さあさあ、いっしょに、踊りましょ」

踊りに誘われたコロンくんは、踊りかたがわからず戸惑っていました。プラムはコロンくんの手をとり、「大丈夫、うまく踊ろうとしないで。音楽に身をまかせていれば、自然と踊れるようになるから」と言いました。

プラムに言われた通り、うまく踊ろうとするのをやめると、あら不思議、音楽にあわせて勝手に体が動き始めるのでした。

「コロンくん、上手。やったね!」

プラムにほめられたコロンくんは、こんなに嬉しい日は初めてかもしれない、と思いました。コロンくんは、嬉しさを踊りで表現できるようになり、夢中で踊り続けました。やがて音楽がとまり、コロンくんが踊りをやめると、こびとたちはコロンくんに盛大な拍手をおくりました。

「ありがとう、みんな。ありがとう!」

コロンくんは深々とお辞儀をしました。

「よかったね。みんなコロンくんのことを気に入ったみたい」

隣にいたプラムが、コロンくんに言いました。

「じゃあ次は、みんなを紹介するね」

再びプラムに手を取られ、コロンくんはこびとたちと挨拶をかわしました。長老のドウォーフ、『空飛ぶ葉っぱ』を作っている魔法使いのクルリ、双子のチッチとポッチ、ほかにもたくさんのこびとを紹介されましたが、コロンくんには覚え切れませんでした。

その後も、コロンくんはこびとたちと大いにはしゃぎ、くたくたになるまで遊びました。楽しいことばかりでしたが、魔女のクルリが作った空とぶ葉っぱに乗って、プラムと一緒に空を飛び回ったのが一番の思い出でした。

「プラム、ありがとう。こんなに楽しかったこと、初めてだよ」

「こちらこそ、コロンくんが来てくれて嬉しいよ。私たち、ずっとコロンくんを知っていたの。とっても優しくて、さみしがりで、まじめなコロンくんが大好きだよ」

「大好き」と言われたコロンくんは、顔が真っ赤にになり、なにも言えなくなってしまいました。

「そうだ、コロンくん。この村にはまだ名前がないんだけど、コロンくんがつけてくれないかな? つけてくれたら、みんな喜ぶよ」

「村の名前?」

コロンくんはしばらくの間、うんうんうなっていましたが、やがてひらめきました。

「『四畳半村』はどうかな? 僕の部屋、広さが四畳半だから」

「素敵! 今日からここは、四畳半村ね!」

大人になったコロンくんは、四畳半村での出来事を振り返り、幸せな気持ちになりました。

初恋の相手がプラムだったこと。プラムには、誰にも言えなかったことをたくさん打ち明けたこと。話しすぎて声が枯れてしまい、両親に心配されたこと。四畳半村が楽しくて、しょっちゅう遊びに行って、よく寝不足になってしまったこと。困ったときは、何度もこびとたちに助けられていたことを思い出しました。

しかし、プラムや四畳半村のことを思い出せば出すほど、幸せな気持ちと同時にさみしい気持ちがわいてきました。そして、四畳半村を忘れていた理由を思い出しました。

コロンくんが少し大きくなり、声が変わり始めた頃、プラムがさみしそうに言いました。

「ごめんね、コロンくん。コロンくんはもうすぐ大人になるから、私たちとは会えなくなるの。でも、私たちはいつも四畳半村から見守っているよ。コロンくんは優しいから、これからも辛くなったり、悲しくなったりすると思うけど、私たちはかならず見守っているからね」

それ以来、コロンくんは四畳半村に行けなくなりました。ベッドからいろんな体勢で落ちてみたり、ベッドの下をくまなく調べたりしましたが、どれもうまくいきませんでした。コロンくんは、四畳半村に行くことをあきらめました。

やがてコロンくんが大人になると、プラムの言っていた通り、今の今まで、四畳半村のことをすっかり忘れてしまっていました。

「プラム、今まで思い出さずにいてごめんね。ぼくは大人になったのに、相変わらず泣いてばかりだよ」

コロンくんは、泣きながら、ベッドの下を見つめました。大人になったコロンくんには見えなくても、こびとたちは今もベッドの下の四畳半村に住んでいて、笑顔で歌い、踊っている。そんな光景が目に浮かびました。

「ぼくはプラムに会いたいよ。今夜だけでいいから、会いたいよ。とってもつらいんだ。みんなが見守ってくれているって信じているけど、会えないのはさみしいんだ。ぼくは、まだ子どものままだよ。ちっとも大人になんかなっていないよ。だから、お願いだから、もう一度だけ……」

コロンくんは、プラムとの再会を強く願いながら、眠りに落ちました。

「おかえりなさい、コロンくん」

名前を呼ばれて目を覚ますと、コロンくんは驚きました。昔と変わらない四畳半村の風景、そして目の前には子どもの頃と変わらない姿のプラムが笑顔で立っていました。コロンくんはあまりの嬉しさに、プラムに抱きつきました。

「プラム! 本当にプラムなんだね」

プラムは何も言わず、コロンくんを抱きしめました。コロンくんは、これまでの不安や悩みが一度になくなりそうなくらい、幸せな気持ちになりました。

「コロンくん、よくがんばったね。私たちは、ずっとコロンくんを見守っていたんだよ」

コロンくんは、大粒の涙をぽろぽろとこぼしました。プラムは何も言わず、コロンくんの涙がおさまるのを待ちました。

「ごめんね、みんなのことを忘れていて。ここのところ、すごくつらかったんだ。でも、プラムに会えたから、もう平気だよ」

話している途中、コロンくんは自分の声が高くなっていることに気がつきました。

「人間の大人は、どうしても四畳半村には来られないの。だから魔女のクルリにお願いして、コロンくんを小さくしてもらったんだ。大きさだけじゃなく、見た目もこどもにね」

プラムはにっこりと笑いました。

コロンくんは、プラムと会えなくなってから今までのことを丁寧に話しました。次の日の仕事を気にする必要はありません。子どもの頃と同じように、誰にも言えなかったことを、時間を気にせずぜんぶ打ち明けました。プラムはコロンくんの一言一言に丁寧に相づちをうち、笑ったり、なだめるような顔をしたり、ときどき怒ったりもしました。恋人と別れ、会社を辞め、家に戻ってきたところまで話し終えると、コロンくんは長く話しすぎてしまったことに気がつきました。

「ごめん、せっかく再会できたのに、自分のことばかり話しちゃった」

「あれから十年以上経っているんだから、話が長くなるのは、当たり前だよ。久しぶりにコロンくんの声が聞こえてうれしいよ」

コロンくんは、久しぶりにプラムと会えたことで、すっかり元気を取り戻していました。プラムはその様子を見て安心し、ゆっくりと口を開きました。

「あのね、コロンくん。クルリの魔法は、朝までしか持たないんだ。滅多に使わない魔法だから……。朝になったら、コロンくんは元の大きさになって、見た目も大人に戻るよ」

コロンくんは、もっとプラムと一緒にいたい気持ちはありましたが、それが無理なことはわかっていました。

「うん……」

「ごめんね、コロンくん。だから残りの時間は、めいっぱい遊びましょ。何かやりのこしたことはない?」

コロンくんは、こどもの頃に大好きだったあの遊びをもう一度したいと思いました。

「やっぱり、空飛ぶ葉っぱかな」

「ふふ、そう言うと思った。クルリ、お願い!」

クルリの名前を呼ぶが早いか、村のほうから空飛ぶ葉っぱに乗ったクルリが、コロンくんたちの元へ勢いよく飛んできました。

「待ちくたびれた! もうすぐ夜が明けちまうよ。さあ、早く空飛ぶ葉っぱでめいっぱい楽しんでおいで」

クルリはそう言って、空飛ぶ葉っぱをコロンくんに向かって投げました。空飛ぶ葉っぱはひらひらと宙を舞い、コロンくんの目の前に落ちました。

「じゃあ、僕が先に乗るね」

コロンくんがぴょんと空飛ぶ葉っぱに飛び乗ると、プラムもそれに続き、コロンくんの背中につかまりました。コロンくんはちゃんと操縦できるか心配でしたが、すぐに乗り方を思い出し、四畳半村の空を自由自在に飛び回りました。

「プラムと一緒に空飛ぶ葉っぱに乗れるなんて、夢みたいだよ」

「コロンくん、空飛ぶ葉っぱに乗ると、本当に楽しそうにしてたもんね」

空飛ぶ葉っぱは、空に向かって急上昇、そのままスピードを落とさず、村のほうへ向かうと、広場から音楽が聞こえてきました。

広場では、長老のドウォーフ、魔女のクルリ、チッチとポッチ、ほかにもたくさんのこびとたちが、コロンくんのために歌い、踊り、演奏をしていました。

「おかえり、コロンくん!」

「ありがとう。みんな、ありがとう!」

コロンくんは、空飛ぶ葉っぱの上から大きく手を振りました。手を振れば振るほど、その分だけ演奏がにぎやかになりました。

「コロンくん、みんなに会わなくて平気?」

コロンくんは、少し考えて言いました。

「うん、やめておくよ。みんなに会ったらもっと帰りたくなくなっちゃうから」

コロンくんはこびとたちに向かってもう一度手を振り、深々とお辞儀をしました。

コロンくんとプラムは、空飛ぶ葉っぱのスピードをゆるめ、村のはずれの草原にやってきました。ここはコロンくんが人間の世界に戻るとき、いつもプラムが見送っていた思い出の場所でした。

「プラム、今日は本当にありがとう」

「うん、こちらこそ」

コロンくんは、最後に何か言わなければと考えていましたが、うまく言葉が出てきませんでした。

「コロンくん、もうすぐ夜が明ければ、クルリの魔法は切れちゃうよ。それで、お願いがあるんだけど……」

コロンくんは、プラムが頼みごとをするなんて珍しいな、と思いました。

「私、一度でいいから日の出を見てみたいの。空飛ぶ葉っぱで、このままコロンくんの部屋へ一緒に飛んでいきたい」

「いいけど、そんなことできるの?」

「うん、できるよ。こびとは、人間の世界に遊びに行けるんだ。空飛ぶ葉っぱが木箱に入っていたでしょ?」

「あれ、プラムが置いてくれたんだ!」

コロンくんは、四畳半村と人間の世界がつながっていることがわかり、うれしくなりました。

「じゃあ、このままコロンくんの部屋まで飛んでいきましょう」

「わかった! 危ないからしっかりつかまっていてね」

コロンくんが再び空飛ぶ葉っぱに乗ると、プラムはコロンくんの背中に強くしがみつきました。空飛ぶ葉っぱが動き始め、コロンくんがめいっぱいスピードを上げると、あたりは次第に明るくなっていきました。やがて何も見えなくなるくらいまぶしく、真っ白になりました。

「コロンくん、もうすぐコロンくんの部屋に出るよ。そのままスピードを落とさないでね」

コロンくんが空飛ぶ葉っぱの操縦だけに意識を向けると、体がふわふわと浮く感覚になりました。遠くからこびとたちの歌や演奏が聞こえ、心地よく眠りに落ちそうになると、途端にあたりの空気が変わり、少し肌寒く感じられました。目を開けると、そこは見慣れたコロンくんの部屋でした。体が小さいため、四畳半の部屋がとても広く見えました。

「おめでとう! 無事にコロンくんの部屋に着いたね」

「本当だ、すごい!」

空飛ぶ葉っぱに乗って、ベッドの下から飛び出したコロンくんとプラムは、窓の外から差し込む光に目をうばわれました。

「これが日の出……」

「そうだよ。こうして毎朝、お日様はこの部屋を照らしてくれるんだよ」

窓の外にはお日様が赤く輝き、うつくしい朝焼けが広がっていました。

「初めて見た……お日様も、朝焼けも、本当にきれい」

コロンくんとプラムは、ゆっくりと進む空飛ぶ葉っぱの上で、うつくしい光景に見とれていました。コロンくんは、きらきらした目でお日様を見つめるプラムを見て、涙があふれてきました。

「プラム、ありがとう。僕、プラムのことがずっと好きだったんだよ」

コロンくんがそう言うと、プラムも涙をこぼしながら答えました。

「うん、ずっと知っていたよ。私も、コロンくんが大好き。これからも、ずっと見守っているからね」

目が覚めると、コロンくんは元の姿に戻っていました。プラムの姿はどこにも見当たりませんでしたが、枕元に葉っぱが置いてありました。コロンくんは葉っぱを布でくるみ、大切なおもちゃがたくさん入った木箱にしまいました。

居間に入ると、お母さんがトーストを焼き、お父さんがコーヒーを淹れてくれました。どちらも心がぽかぽかと温かくなるような味でした。お父さんとお母さんは、コロンくんの目がはれていることに気づき、温かい言葉をかけました。コロンくんは気づいてくれていることが嬉しくて、また泣いてしまいそうでした。

コロンくんは、仕事も恋人もなくし、自分の居場所がなくなってしまいそうで心配でしたが、コロンくんにはお父さんとお母さんがいて、帰る家があることがわかりました。そして、コロンくんの部屋には四畳半村があり、例え目に見えなくても、いつでも見守ってくれているということがわかりました。何もなくなってはいなかったのです。仕事が忙しすぎて、辛いことが多すぎて、一時的に大切なものを忘れていただけなのです。

コーヒーを飲み終え、コロンくんは、これからは子どもの心を隠さずに生きていこうと思いました。そして、子どもの心を持っていなければできないような仕事をしようと決意しました。

「お父さん、お母さん。心配かけてごめんね。もう平気だから」

お父さんとお母さんは、にっこりとほほえみました。コロンくんの目は、まるで子どものように、きらきらと輝いていました。