今を生きる

例えば自宅から目的地へ向かって歩いている途中だとします。
多くの人が、それぞれの歩き方で、それぞれのルートで、
学校や会社など、それぞれの目的地へ向かって、
えっさほいさ、なんだ坂こんな坂、と歩いています。

ある人は、自宅のことが気になって仕方ありません。
「部屋の鍵、閉め忘れていないかな?」
「もっといろいろな物をを持ってくるべきだった」

またある人は、目的地のことが気になって仕方ありません。
「学校ではしたくもない勉強をさせられる…行きたくないな」
「会社には嫌いな上司がいる…嫌だな」

どちらも、「今」が見えていません。
今歩いている道のこと、今過ぎてゆく風景のこと。
自宅は「過去」、目的地は「未来」です。

過去の経験を、「今」に生かすのは良いでしょう。
未来を描いて、「今」の行動を選定するのも良いでしょう。
ただ、過去を悔やみ、未来を悲観するのは、
「今」に何も良い影響を及ぼしません。

そればかりか、「今」が見えていないため、
道ばたに咲いている美しい花や、蝶の舞いに気づかないのです。
鳥の声も聞こえません。青い空、流れる雲、もしかしたら、
降り注ぐ雨にすら気づかない危険もあります。

「今」が見えていないとは、こういうことなのです。
人は誰も、自宅に忘れものなんてしていないのです。
持ってくるべきだったものは、すべて持っているのです。

人は歩いている限り、必ず目的があります。
目的地に着くことを拒否し、
嫌な気分のまま歩き続けることは、
心と体に大きな負担がかかります。

歩くこと事態を否定することになるため、
やがて「自分はなんで歩いているんだろう?」と悩み、
ますます「今」が薄くなり、
次第に周りが見えなくなってしまいます。

そんなときは、立ち止まってみればいいんです。
歩くことから逃げるのではなく、少し休めばいいんです。
深呼吸をして、耳をすましてみましょう。
鳥や虫の声、草木の揺れる音が聞こえるかもしれません。

空を見上げてみましょう。雲はどこに向かっていますか?
視線を下げ、目的地の方向を見てみましょう。
そのまま視線をあなたの足下に落としてみましょう。
そこが「今」いる場所です。

自分を見失いそうになったときは、
こうして現在地を確認すると、焦らずに済みますね。
一歩一歩、目的地に向かって丁寧に足を前に出しつつ、
周囲の景色、音や風を感じることができれば、
目的地へ向かうコツを掴んだも同然です。

何も難しくはありません。
優しい気持ちで、のんびりと歩いていればいいんです。
周りがせかせかして見えても、合わせる必要はありません。
あなたの作った道です。通行人も、あなた一人だけなのです。